栄養顧問のためになる話

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これからのジャパン・ニュートリション

  「日本食は健康に良い」。私たちは、そう聞くと、魚、豆腐、納豆、味噌、海藻、野菜などを思い浮かべます。確かに、日本の食文化には、健康づくりに生かしたい素晴らしい知恵がたくさんあります。しかし、「伝統的な日本食だから健康に良い」と言い切ってしまうと、実は半分正しく、半分間違っていると日本栄養士会会長であられる中村丁次先生が仰いました。

   中村丁次先生が提唱する「ジャパン・ニュートリション」は、まさにこの点に大切な視点を与えてくれます。日本が長寿国になった理由を、単純に「昔から日本食が健康的だったから」と考えるのではなく、明治以降、栄養学を取り入れ、戦後の栄養改善運動によって、食生活そのものを科学的に改善してきた歴史に目を向ける考え方です。

   かつての日本人の食生活には、栄養不足という大きな問題がありました。そこで、米を中心とした日本の食文化を大切にしながら、肉、魚、卵、乳製品などからたんぱく質や脂質を取り入れ、栄養バランスを整えていきました。つまり、日本人は「昔の食事に戻った」のではなく、伝統を土台にしながら、科学の力でより健康的な食事をつくってきたのです。

  ここに、ジャパン・ニュートリションの大きな特徴があります。

   そして今、私たちは新しい課題に直面しています。食料不足の時代から、食べ過ぎや運動不足、生活習慣病、フレイル、さらには超加工食品の増加や食品ロス、環境問題など、「食べること」を取り巻く環境は大きく変化しました。

   だからこそ、現代の私たちに必要なのは、「昔の日本食に戻りましょう」ということではありません。

   大切なのは、日本食が持つ「主食・主菜・副菜」という食事の組み立て方、旬の食材を楽しむこと、野菜や豆、海藻などを取り入れる知恵、だしや発酵食品によっておいしく食べる文化など、先人が培ってきた知恵を受け継ぎながら、現代の科学的な栄養学によってアップデートしていくことです。

   例えば、忙しい現代人にとって、毎日一から料理をすることが難しいのであれば、惣菜や外食、中食も健康づくりの味方にする。高齢者には、単に「減塩・低カロリー」を求めるのではなく、たんぱく質やエネルギーを十分に摂り、フレイルを予防する。子どもには、食べることの楽しさとともに、将来の健康につながる食習慣を伝える。そして災害時には、我慢する防災食ではなく、日常の食事の延長として健康を守れる食事を備える。

  これこそが、現代社会におけるジャパン・ニュートリションの実践ではないでしょうか。

   栄養学は、知識として知っているだけでは健康につながりません。家庭、学校、地域、医療、福祉、そして食を提供する事業者など、社会のさまざまな場所で「実践できる形」にしてこそ、その力を発揮します。日本の栄養改善が成功した背景にも、管理栄養士・栄養士が社会のさまざまな場で栄養改善を実践してきた歴史があります。

 「日本食は健康に良い」という言葉を出発点にしながら、科学的な根拠を加え、時代の変化に合わせて食を進化させる。そして、一人ひとりの暮らしの中で無理なく実践できる健康な食事をつくっていく。

  過去の日本食をそのまま再現するのではなく、「日本人が栄養によって健康をつくってきた」という歴史そのものを、未来へ受け継いでいく。

  それが、これからの時代に私たちが実践したい「ジャパン・ニュートリション」なのだと思います。

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