先日、娘と一緒に帰宅途中、マンションの駐輪場で2匹の子猫に遭遇しました。大きさから見て、生まれて3ヶ月くらいではないかと思いました。2匹の子猫は私たちと一定の距離を保ち、こちらから声をかけても近づいてきませんでした。娘は少し残念そうに「どうしてあの子たちは来ないの?」と聞いてきました。
その瞬間、5年前のことを思い出しました。店の近くで生後三ヶ月くらいの子猫を保護したことがあります。その子は「福ちゃん」と名付けられ、今では私たち家族の大切な一員です。
福ちゃんとの出会いは、夏のある日のことでした。店外で水を撒いていると、どこからともなく小さな子猫が現れました。水が欲しいのかと思い、容器に水を入れて差し出すと、夢中で飲んでいました。翌日もまた姿を現し、今度は私の目の前で横になり、お腹を見せてきました。その仕草がとても可愛らしく、つい事務所に連れて行き、子猫用のフードを買って食べさせました。ただ、その時点では福ちゃんを飼うつもりはなく、食べ終わるとまた外に放しました。
3日目、福ちゃんは私を待っていました。事務所に連れて行き、餌をあげるときは福ちゃんが嬉しそうに私にまとわりつき、一緒に遊びました。しかし、いざ外に戻そうとすると、驚くほどの力で抵抗し、事務所の机の下に隠れてしまいました。2日間この状況が続き、どうするべきか悩んだ末、動物保護センターや警察に相談しましたが、警察署で3ヶ月間保管されると言われました。そうしようと思い、帰ろうとしたら保管用のケージを見ました。とても小さなケージだったので、どうしてもそこに福ちゃんを置きたくないという気持ちが湧き上がり、警察に「自分で面倒を見ます」と告げて福ちゃんを連れて帰りました。そして3ヶ月後、正式に飼い主がいないことが確認され、福ちゃんは私たちの家族になりました。
今では福ちゃんは家の中で一番甘えん坊の存在です。娘と一緒に遊ぶのが大好きで、日向ぼっこをしながら幸せそうにゴロゴロと喉を鳴らしています。家に帰ると、いつも玄関で私を待っていて、その小さな体で全力で喜びを表現してくれます。
福ちゃん
娘に「なぜあの子猫たちは来ないのか?」と聞かれたとき、私は「きっと自分で飼ってもらえないと分かっているから」と答えました。けれど内心では、「もしかしたら、また福ちゃんのような出会いがあるかもしれない」という期待もありました。5年前、なぜ福ちゃんが私を選んだのかは分かりませんが、彼が自ら一歩を踏み出し、私たち家族になる道を選んだことには意味があったと思います。
猫にも選択の自由があります。目の前のチャンスを掴むために一歩を踏み出すことも、動かずそのチャンスを見送ることも、猫自身の自由です。福ちゃんはその一歩を踏み出し、野良猫ではなく私たちの家族になる道を選びました。私がいい飼い主であるかどうかは分かりませんが、彼の勇気に応えるために、これからも彼を守り続けたいと思います。
マンションの駐輪場で見た2匹の子猫は、その後、姿を現しませんでした。どこかで幸せにしていることを祈っています。
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