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瓶牛乳

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   私は温泉が好きだ。今もどんなに忙しくても癒しの時間を求めてどこかで1時間を見つけて巣鴨駅近くの「SAKURA」温泉に足を運んでいる。

   温泉に行くたびに、一つ楽しみにしていることがある。それは、お風呂上がりの後、冷たい瓶牛乳を飲むことだ。

 しかし、先週金曜日に温泉に行くと、いつも通り自販機で牛乳を買おうとしたら、瓶牛乳の姿が消え、プラスチック容器の牛乳になった。他の選択肢はなく、買って飲んでみたら、いつものあのおいしさは無くなった。

   たかが容器の違い。味は同じはずなのに、何かが決定的に違っていた。

 瓶を手にしたときの、ひんやりとした重み。フタを開ける時あの「ポンッ」の音。唇が瓶の口に当たった時の感触。腰に手を当ててゴクゴク飲み干す一連の動作。そのすべてが、私にとっての“癒しの儀式”の締めくくりだったのだ。

   プラスチック容器では、それがなかった。軽すぎて手応えがなく、口当たりも味気ない。瓶の回収や洗浄より環境にいいとメーカーが言うかもしれないけれど、私にとってそこには“気持ち”が宿っていなかった。

 またひとつ、大切にしていた楽しみが奪われてしまった、そんな気持ちだった。

このことがあってから、ふと、自分の商売のことを思い出した。


私は餃子を作っている。食材や味にこだわるのはもちろんだけど、「誰と食べるか」「どういう場面で出すか」も含めて、食べる人の記憶に残る体験を届けたいと思ってきた。

   もし、私の作った餃子がただの“おなかを満たす食べ物”で終わってしまったら、それはとても寂しい。

パッケージひとつ、同梱物ひとつ、提供の仕方ひとつで、お客さんの感じ方は大きく変わる。瓶牛乳のことは、その大切なことを私に改めて思い出させてくれた。

 小さな変化の中に、人の気持ちが潜んでいる。このことを、これからも忘れずにいたい。

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