BLOGブログ

BLOG

8

夏のベランダでの思い出

ブログ

    夏になると私の生まれ育った中国の葫蘆島(ころとう)市のおばあちゃんの家と当時の風景を思い出します。葫蘆島市は湾をはさんだ大連の北側に位置する港町です。先日、母からおばあちゃんのお墓参りをしたという便りと一緒に木造3階建てのアパートの写真が送られてきました。

    外に突き出したベランダは今も健在であり、そこで従妹たちとおしゃべりをしながら夕涼みをするのが楽しみでした。

   

    おばあちゃんが夕食後に、冷たい井戸水で冷やしたマクワウリをベランダに運んできて、みんなで一緒に食べた光景を昨日の出来事のように思い出すことがあります。蚊が飛んでくるので、おばあちゃんは線香を焚きながら、ヨモギを手にして蚊よけをしてくれました。

    夕日が沈み、赤く染まった雲が風に乗って流れ、コウモリやツバメが飛び交いながら餌を捕まえ、アヒルたちがゴミ場に捨てられたスイカの皮をほおばっていました。街灯の下で中国将棋の勝敗を争うおじいちゃんたち、竹で作ったリングに蜘蛛の巣を巻いてトンボや蝉を捕獲して鶏の餌にしようとする男の子たち・・・。忘れることができない私の少年時代の原風景です。

    小学校3年生の時、予告なく転校させられました。新しい学校は遠い場所にあり、友達とはもう二度と会えないのかと思うと寂しくて、夏休みにおばあちゃんの家で過ごしたある日、夕暮れのベランダで思い切り涙を流しました。おばあちゃんは私の頭を撫でながら「人は皆、何度も別れを経験するものだよ。だから、前を向いて進んでいこうね」と優しく励ましてくれました。幼い自分にとって、目の前の別れは辛く、どうしたら前に進めるのか分からなかったです。

     大人になって色々な別れを経験し、「前に向いて進む」ということの意味が分かってきました。夏のベランダでおばあちゃんは「いつでも今を大切に生きていくこと」を言い聞かせたのです。お婆ちゃんと一緒に過ごした時間とこの言葉を胸に刻んで、これからも歩きたいと思います。

RELATED

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

PAGE TOP