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日常の英雄

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   近所のスーパー「肉のハナマサ」の入り口に立っている警備のお爺さんの姿が見えなくなってから、かれこれ数ヶ月になります。微笑む顔を見ないだけで、周辺の風景がすべて寂しく感じるようになっていました。

   このお爺さんの名前は知りませんが79歳であることは知っています。2017年に私が「巣鴨餃子坊」を開業すると、彼はランチになると出勤の度に来店し、時には書道の仲間とともに台湾ラーメンを楽しみながら談笑していました。挨拶を交わすようになり、「肉のハナマサ」を通る度に警備のお爺さんはニコニコしながら私に敬礼してくれていました。

   お爺さんは警備の仕事に留まらず、頻繁に店舗の手伝いもしていました。段ボールを畳んだり、店頭のゴミを掃除したり、来店客に優しく声をかけたり。彼の働く姿勢は、ただの臨時警備員ではなく、店を背負うスタッフそのものでした。

   お爺さんの姿が見えなくなってから、私はレジの店員さんに「いつ戻りますか?」と聞いていました。店員さんは「お爺さんがいて本当に助かっていました。早く戻ってきてほしい」と語っていました。

   先週、店員さんから今週土日に出勤すると聞きました。今日こそ久しぶりに彼に会えると期待して行きましたが、新しい警備員が立っていました。

 

   名前さえ知らないお爺さんですが、私は心の中で「日常の英雄」と呼んでいました。温かい微笑みで私に接する態度は、日常の雑多な仕事に追われる私にとっては、砂漠の中のオアシスのような安らぎの瞬間でした。

   再びその瞬間を運んでくれることを心から願わらずにはいられませでした。

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