近年、「腸活」という言葉が広く知られるようになり、ヨーグルトや発酵食品を積極的に摂る人が増えています。しかし、本来の腸活とは特定の善玉菌を増やすことばかりではありません。大切なのは、腸内細菌の「多様性」、つまりさまざまな種類の細菌がそれぞれの役割を果たしながら協力して働く環境を育てることです。
私たちの腸内には約100兆個もの細菌が生息し、その種類は数百から千種類以上ともいわれています。ある細菌は食物繊維を分解してエネルギー源を作り、ある細菌はビタミンを合成し、また別の細菌は病原菌の侵入を防ぎます。それぞれの細菌が得意分野を持ちながら働くことで、私たちの健康は支えられています。
この姿は、日本社会の強さによく似ています。資源の少ない日本の最大の国力は、「チーム力」ではないかといわれています。
ものづくりの現場でも、医療の現場でも、地域活動でも、一人の優秀な人だけで成果を生み出すことはできません。営業、製造、事務、物流、研究開発など、多様な人材がそれぞれの役割を果たし、力を合わせることで大きな成果が生まれます。
腸内細菌もまったく同じです。特定の菌だけが増えている状態は、エース選手だけが集まったチームのようなものです。一見強そうに見えても、実際にはバランスが悪く、変化に対応できません。一方、多様な細菌が存在する腸は、それぞれの役割を持つメンバーが揃った強いチームです。だからこそ便秘や感染症、ストレスなどさまざまな課題にも対応しやすくなります。
腸内細菌の多様性を育てるには、調加工食品を控えながら、多様な食材を食べることが重要です。野菜、果物、豆類、海藻、きのこ、発酵食品などを幅広く取り入れることで、多くの細菌にエサを供給できます。さらに、適度な運動や十分な睡眠も腸内環境を整える大切な要素です。
腸活とは、特定の食品を食べることではなく、腸内細菌のチーム力を高めることです。そして、そのチーム力を支えるのが多様な食事と生活習慣です。日本の強みが多様な人材の協力によって生まれるように、私たちの健康もまた、多様な腸内細菌の協力によって支えられているのです。