栄養顧問のためになる話

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糖質を“我慢”しない栄養学

   近年、健康や栄養の話題では、たんぱく質やビタミン、ミネラルが大きく注目され、「高たんぱく」「糖質オフ」という言葉が日常的に使われるようになりました。もちろん、たんぱく質やビタミン・ミネラルは身体を維持するために欠かせない栄養素です。しかしその一方で、私たちの身体を最も大きく支えている“糖質”が、必要以上に悪者として扱われる風潮も強まっています。

    実際には、私たちの食事における総エネルギーの55〜60%は糖質から供給されています。

   つまり糖質は、人の身体を動かす「主役のエネルギー源」です。脳、筋肉、内臓などは、活動するために糖質から作られるブドウ糖を利用しています。特に脳は、通常ほとんどを糖質に依存して働いているため、不足すると集中力低下、疲労感、イライラ、思考力低下などが起こりやすくなります。

   しかしここで意外なのは、これほど大量に摂取している糖質が、体内にはほとんど蓄えられていないという事実です。糖質は筋肉や肝臓に「グリコーゲン」として保存されますが、その量は体重の1%にも満たない程度しかありません。つまり人の身体は、糖質を大量に貯蔵する構造にはなっていないのです。

  これは、糖質が「貯金型」のエネルギーではなく、「循環型」のエネルギーであることを意味しています。食べて、血液に送り、使い、また補給する。この流れが繰り返されることで、人は活動を維持しています。そのため朝食を抜くと力が出ない、長時間食べないと集中力が落ちる、疲れると甘いものが欲しくなる、といった現象が起こります。これは単なる嗜好ではなく、身体がエネルギー不足を知らせている自然な反応なのです。

   一方、現代社会では「糖質を摂りすぎている」のではなく、「糖質をうまく燃やせなくなっている」ことが問題になっています。デスクワークやスマートフォンの普及により座る時間が増え、運動不足や筋肉量低下が進んでいます。筋肉は糖質を最も多く消費する組織であるため、筋肉量が減ると糖質を処理する力も低下します。その結果、食後の眠気、だるさ、血糖変動、疲れやすさ、肥満などにつながりやすくなります。

   だからこそ今必要なのは、「糖質を減らすこと」ではありません。本当に重要なのは、「糖質を効率よく燃焼できる身体をつくること」です。そのためには、適度な主食摂取、筋肉維持、日常的な活動、十分な睡眠などが大切になります。また糖質をエネルギーへ変換するためには、ビタミンB群などの補酵素も必要であり、糖質だけでも、たんぱく質だけでも身体はうまく機能しません。

   特に高齢者では、「ご飯を減らしておかずを増やす」という考え方だけでは、エネルギー不足から低栄養や筋力低下を招くことがあります。食べられる主食をしっかり確保することは、元気に動き続けるための重要な支えでもあります。

  これからの栄養の考え方は、「糖質を制限する」ことよりも、「糖質を活かす身体を育てる」ことへ変わっていく必要があります。糖質は悪者ではありません。身体を動かし、脳を働かせ、人が生きる力を支える“流れるエネルギー”なのです。

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