9月、清緑園に新しい仲間が加わった。20代後半、台湾出身の女の子だ。これまで清緑園では私が一番年下だったけれど、ようやく自分より若いメンバーが入り、みんなが心から喜んでいた。
彼女はとても責任感が強く、明るくて、何より素直。私の“期待の星”だ。
これから、日本語をはじめ、店舗運営や通販のこと、そして清緑園が大切にしているやさしさとサービスの精神を少しずつ伝えていきたい。いつか安心して店を任せられるように、自分の分身を育てていきたい。
彼女を見ていると、自然と自分が清緑園に入った頃のことを思い出す。
今から9年前、日本の大企業で鍛えられた私は、まず店舗のルール作りやマニュアル作りなど、仕組み作りに取りかかった。毎週月曜日にはミーティングの時間も設けようとしていた。
でも、すでに1年間お店を支えてきた妻が猛反対した。「今の清緑園には、大企業のやり方は合わないよ」。その一言に衝撃を受けた。正直、最初は納得できなかった。何度もぶつかり、喧嘩もした。そんなとき、友人に言われた言葉がある。
「Happy wife, Happy life」
その言葉をきっかけに、私はふっと力が抜けた。そうか、現場のことは、現場を一番わかっている妻に任せよう。そう心に決めたら、不思議と楽になった。
私は昔から、人に強く命令したり、厳しく言うのが得意ではない。でも、お店をよくしていくためには、やるべきことをやらなければいけないと思っている。たとえば清掃。清潔さは味よりも大事だと私は思っている。この意識をどうやってメンバーに伝えるか悩んでいたとき、ふと思い出したのが「山本五十六方式」だった。――やってみせ、言って聞かせて、させてみる。
それで一週間、閉店後に徹夜で掃除を続けてみた。すると、何も言わなくても、メンバーたちが自然と自分から動き始めた。人は、言葉より背中を見て動くんだなと、そのとき初めて実感した。
五年前から、私は清緑園の成長戦略を考え、経営理念や行動方針を作り、新年会でみんなに話すようにしている。
その中で、「Happy wife, Happy life」からヒントを得て、「Happy workers, Happy customers」という言葉を掲げた。
清緑園で働くみんながハッピーでなければ、お客様に笑顔を届けることはできない。仕事って、結局は人と人。笑顔は伝染する。だから、まずは一緒に働く人たちが笑顔でいられるようにしたい。これからも、働く人も、食べる人も、どちらも笑顔になれる――そんな店であり続けたいと思う。
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