BLOGブログ

BLOG

11

頤養天年と人生100年

ブログ

 中国には「頤養天年(イーヤンテェンネン)」という言葉があります。その意味は、中国の伝統的な価値観に基づく考えで、「晩年を楽しみ、寿命が来るまで静かに過ごす」という意味でます。

 この言葉は、穏やかで平和な老後生活を重んじる中国の文化的理想を表しています。高齢者が社会的な役割から離れ、リラックスして人生の晩年を過ごすことを理想とする考え方です。

 日本は世界トップの長寿国家です。「人生100年時代」の言葉も定着し、「死ぬまで元気に働く」というのも、国民共通の思いのようです。中国人が聞くと、ちょっとびっくりする日本人の健康観、人生観です。

 自分の両親のことを思い出します。母は55歳でリタイアし、その後私の娘の面倒を見ていました。娘が6歳の時に日本に行ったので、急にやることがなくなり、毎日家の掃除で忙しくしていましたが、絵を学んだりして生活をそれなりに楽しんでいました。

 父は65歳でリタイアし、それから老年大学に入り、唱歌の勉強を始めました。中国伝統の弦楽器、二胡(にこ)を無償で教えたり、合唱団の団長としても大忙しでした。二胡とは、馬の尾の毛を二本の弦として張った楽器を弓でこすって演奏するもので、父は若いころから習得した演奏技術を持っていました。

 先日、私の経営していた餃子レストランで働いていた女性が清緑園に来ました。彼女がレストランでパートをしていたことは60代後半でしたが、今年は75歳になったということでした。

 清緑園に来た理由を聞くと、仕事を探しているとのことでした。特にお金に困っているわけではなく、ずっと家にいるのが退屈で、美容代くらいは自分で稼ぎたいと言っていました。

 日本で長く生活すると、「こんな年齢でも働くの?」という驚きがなくなりました。日本に来て最初のアルバイト先の主任は82歳であり、週3回マンションの管理人として働いていました。商店街の肉のハナマサの警備員は80歳になっても、週末や縁日に店頭に立っています。私の大学院時代の恩師である馬場錬成先生は、83歳になっても日本の教育改革や食育の推進運動に日夜取り組む活動をしています。周辺にいる元気な高齢者の姿を見ると、人生100年時代はすでに到来していると思います。

 中国の「頤養天年」と日本の「人生100年、元気で働く」という人生観は、どちらがいいのか考えさせます。中国生まれ、日本人に帰化した私は、いつしか「死ぬ瞬間まで働きたい」と思うようになっています。

RELATED

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

PAGE TOP