今回は、小さな飲食店や個人ビジネスでも「商標登録が大事」ということについてお話します。
店舗運営をしていて、稀ではありますが、お客様に「清緑園の後についているあの丸い枠のマークはなんだ?」と聞かれることがあります。「あれはうちの登録商標ですよ〜」と一言で済ませられればいいのですが、「商標とはなんぞや?」の説明を付け加える必要がありますので、私はこのような状況に陥ると「この名前はうちしか使えませんよ」、「今度どこかで見かけたら教えてください、その店を訴えますから」と冗談っぽく返します。
冗談っぽいこの話の中に重要なことが二つ含まれています。一つは、当店舗でしかこのマークを使えないこと。もう一つはこのマークを真似したお店を訴えることができることです。商標は独占的な資産、権利ですので、お客様からそのマークの価値が認められれば店舗としての優位性が守られることになります。
「中華料理店のオヤジなのに、意識が高いね」と思われるかもしれませんが、実は、私は東京理科大学知的財産専門職大学院(略M I P)で学び、その後、子供用や成人用おむつ、生理用品を製造・販売しているユニ・チャームという会社の知的財産部門で商標管理の仕事をしていました。自分の夢を実現するために独立しましたが、ユニ・チャームでの経験を通じて、知財の仕事を通じて、知財権でリスクを回避するという考えがしっかりと頭に刻まれました。
(ユニ・チャーム時代の筆者)
想像してみてください。
- あなたは地方の町でパン屋を営業し、平凡な日々を送っています。ある日突然、某大手の製菓会社から1通の警告状が来ました。その会社の登録商標を使用しているとのことで、直ちにネーミング変更やそのネーミングで印刷された包装紙を全て廃棄するように求められました。
- あなたは主婦ですが、趣味で手芸を学び、自分がいいなと思った名前とロゴ(いずれも商標未登録)を使ってインスタグラムで集客し、人に教えたりします。時間や経験を経てあなたはその分野で有名になりました。ある日あなたが百貨店を訪問すると、あなたが使っている名前とロゴの手芸専門店を発見しました。しかも店長はあなたの教え子であることがわかりました。あなたは憤りを感じるかもしれませんが、その名前とロゴは商標登録されていませんでした。教え子は商標登録されていないので、「使ってもいいでしょう?」と返してくる始末。
こんな話はありえないと思うかもしれません。しかし、インターネット社会の現代、商標を先に出願した人が勝ちという商標制度の下でこのようなシチュエーションは大いにありえるでしょう。こうなってしまうと自分が苦汁を飲むしかないのです。体力の乏しい飲食店や個人にとっては、それは大変ですよ。
これらのリスクを回避するために、清緑園は店名だけではなく、提供している商品やサービスに新たなネーミングを使う時に必ず事前に商標調査・出願し、確実に商標権を獲得しています。
商標出願したいけど、どうするかわからない方はぜひ弁理士を使ってください。弁理士というのは知的財産権の取得をサポートしてくれる国家資格を持つ人達です。多少費用がかかりますが、専門的な仕事は専門家にお任せして、自分は自分の得意な仕事に集中するのが良いでしょう。権利取得の成功率も高くなります。
ちなみに、私がいつもお世話になっている特許事務所をご紹介します。横浜にあるみなとみらい特許事務所です。この事務所の辻田朋子所長と何回かお会いしたのですが、とても素晴らしいビジョンを持つ方で、スタートアップ企業・中小企業・非メーカーであっても、自社の知財を戦略的に創出・保護・活用することができるような環境を作りたいとおっしゃっています。YouTubeで知財のことを紹介するチャンネルも開設していますので、ぜひ見てください。ここに、商標制度を紹介する動画を掲載しておきます。ご参考ください。
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