ある夜、寝る前だというのに、無性に辛ラーメンを食べたくなった。こんなとき、映画『トップガン』のセリフ「Don`t think, just do」を都合よく使い、私は鍋に水を入れ、火をつけた。
私には、インスタントラーメンの作り方にちょっとしたこだわりがある。麺の塊の厚みと同じぐらい、少しだけ浮くような程度にお湯の量を使う。スープがほとんどなくなるまで茹で上げ、調味料が麺に吸収され、麺の硬さももちもちで、自分の好みに一番適している。これが実に美味しい。
ふと、この「スープなし」の食べ方がいつ、どこから始まったかを思い出そうとして、記憶は中国の大学時代へとさかのぼった。
当時、大学の正門すぐ側に小さな売店があった。夫婦が営んでいて、学校食堂の味に飽きた時、私はよくここに通っていた。その売店では、買ったインスタントラーメンをその場で調理してもらえた。
店主の奥さんはインスタントラーメンを茹でる時によく「スープあり?なし?」と聞いてきた。試しに「スープなし」で食べてみたら、その感動を今も覚えている。
大学時代、私は十人部屋で共同生活していた。入学当初、年齢で順番を決めていた。私は6番目で、よく5番目と10番目の“兄弟”と一緒にその売店に通っていた。三人とも、店主の奥さんが作った「スープなし」のインスタントラーメンが好きだった。小さな売店で、熱々のラーメンをすすりながら、ソーセージを取り合い、大したことでもない話で一緒に笑いあった。
1年生の終わり、私は日本に留学することを決めていた。ある日、いつものように「スープなし」のインスタントラーメンを食べながら、そのことを二人に告げた。箸が止まり、言葉が出なかった、沈黙がやけに長く感じた。
あれから時が流れ、二人も日本に来て、今は東京で働いている。同じ街にいるのに、忙しさに追われてなかなか会えない。
あの夜、スープなしインスタントラーメンをすすり、二人のことを思い出した。またいつか、スープなしラーメンを、三人で囲めたら。
ただ、それだけを願っている。
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