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トイレで見る店の姿

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   飲食業に携わるようになってから、私の外食の楽しみ方はすっかり変わった。ただお腹を満たすだけではなく、さまざまな店のメニューや販売方法、サービスの工夫を観察することが習慣になった。特に、清緑園のように「町中華」というポジションで、食堂と酒場の両方の機能を持たせるには、どんな取り組みが活かせるのかを常に考えている。だからこそ、他店の良いアイデアはどんどん取り入れ、真似できることは試してみる。

   そんな私には、外食をする際に必ずチェックする場所がある。それは「トイレ」だ。

    店のトイレには、清潔さだけでなく、店主のこだわりや経営方針、さらには儲けの仕組みや戦略までも垣間見えることがある。

    先日訪れたのは、日本酒を扱う専門の居酒屋。冷蔵庫に並ぶ日本酒が飲み放題で、2時間1200円という破格の設定。会社帰りのサラリーマンや若いカップルで賑わい、どの席も楽しそうに杯を重ねていた。

   「こんな価格で本当に採算が取れるのか?」

    そんな疑問を抱きながらトイレに行くと、壁に貼られた人材募集の広告が目に入った。その内容を見て納得。この店の母体は日本酒の卸会社だったのだ。つまり、この店は「日本酒を知ってもらう場所」として機能しており、ここで気に入った銘柄をスーパーやオンラインで購入してもらうことが狙いなのだろう。なるほど、飲み放題の料金が安い理由が見えてきた。さらに、トイレにはこの日本酒卸会社の社長が書いた色紙が飾られていた。「おもいを実現する」という力強い言葉が書かれている。その言葉に引き寄せられるように、この会社の背景を調べてみた。トイレの掲示物から、店の戦略だけでなく、経営者の哲学までもが見えてきた瞬間だった。

 もう一つ、興味深い例がある。とあるラーメン店では、トイレの中に店の歴史や受賞歴、さらには「スープのこだわり」について詳しく書かれたパネルが設置されていた。厨房の様子が見えない店では、「このラーメンがなぜ美味しいのか?」を客に知ってもらうことが難しい。だが、トイレという密閉された空間で、じっくり読んでもらうことで、店のブランドイメージを強化しているのだ。

   このように、トイレはただの付属設備ではなく、店の戦略やブランディングを伝える場としても機能する。求人広告を通じてビジネスモデルを知ることもあれば、色紙やパネルから経営者の想いを感じ取ることもできる。清緑園でも、トイレをただ清潔に保つだけでなく、何か店の個性を伝える仕掛けを作り、「トイレマーケティング」を活用するのも面白いかもしれない。

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