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二つの“中元”

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   一昨日、母から連絡があった。

 「最近よくあなたのお父さんの夢を見る。明日、中元節だから、私の代わりにお父さんに会いに来て。心配しないでと伝えてね」

   母に言われた通り、9月6日にお父さんに会ってきて、母のことを心配しないでと手を合わせて伝えた。

   帰りの車の中で、ふっと思った。そういえば日本にも「中元」という言葉がある。日本では七月に入ると、誰かに感謝の気持ちを伝えるために「お中元」を贈る。日本では生きている人に贈り物、中国の中元節では亡くなった人に贈り物。同じ言葉を使っていても、意味はまったく違う。

   中国では、中元節以外にも、亡き人を思う日がある。

   春の清明節にはお墓を掃除して亡くなった親族を偲ぶ。七月の中元節には紙銭や供物を捧げ、河灯を流して陰界の魂を慰める。そして秋の寒衣節には「寒衣」と呼ばれる紙の衣を燃やし、冷たい季節を安心して過ごしてほしいと願う。春は思い出し、夏は慰め、秋は温める――四季の移ろいとともに亡き人を気遣うのが、中国の祭祖文化なのだ。

   中国では亡き人に紙銭を、日本では生きている人にビールやお菓子を。対象は違っても、どちらも「心を届ける」という点では同じだと思う。亡き父に「心配しないで」と伝える気持ちも、生きている人に「ありがとう」と伝える気持ちも、どちらも人と人とのつながりを確かめる大切な瞬間なのだ。

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