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春餅

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   母がそばにいると幸せだ。その幸せのひとつは、記念日や季節の変わり目に、伝統的な料理を食べられること。

   3月20日、春分の日、母が春餅を作ってくれた。クレープのような薄い皮に、千切りのじゃがいもと豚肉炒め物、漬け白菜と春雨の炒め物、具材をそれぞれの好みで巻いて食べる。そのまま食べてもいいし、甜面醤を少しつけても美味しい。

   本来、春餅は中国で立春に食べる習慣がある。「春を巻いて食べる」ことから、「咬春(カオチュン)」とも呼ばれている。今年の立春は2月3日で、母が日本に来る前だったため、少し遅れての「咬春」になったけれど、まだ春のうちだからと、母が用意してくれたのだ。

   母が作る春餅の皮は、小麦粉とぬるま湯を混ぜてこね、少し寝かせたあと、油を塗って二枚重ねにして焼く。そうすると、焼き上がったあとで二枚がするりと剥がれ、もちっとした食感に。市販のものよりも、手作りの皮はふんわりとしていて、ほんのり小麦の香りがする。

   思えば、母と一緒に台所に立った記憶はそう多くない。でも、春餅だけはほぼ毎年一緒に包んで食べていたような気がする。小さな私が、皮に具を詰めすぎてこぼしてしまい、母が笑いながら手伝ってくれたことも、ふと思い出した。

   忙しい日々のなかで、季節を感じる料理をちゃんと食べるというのは、案外難しい。でも、母がそばにいると、それが自然と食卓にのぼる。季節の移ろいを感じるのは、きっとこういう小さな習慣からなのだろう。

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