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白髪おばあちゃん

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  「お釣りは結構です。おばあちゃんの時からお世話になっているんで」

   その言葉を聞いて、私は思わず、お釣りを渡す手を空中で止めてしまった。目の前にいる若い男性に視線を移し、ふっと思い出した。この子は、あの白髪のおばあちゃんの孫だ。

   「白髪おばあちゃん」——それは、私たちスタッフが親しみを込めて呼んでいた常連のおばあちゃんのことだ。清緑園が開店した当初から、週に二、三回はお店に足を運んでくれていた。いつも優しい笑顔を浮かべながら、「お釣りはいいよ」と言ってくれたり、時には別のお店で買ったパンや焼き芋を差し入れてくれたりした。おばあちゃんの温かい人柄に惹かれ、スタッフ全員が自然と彼女を好きになった。白髪が印象的だったので、皆で「白髪おばあちゃん」と呼ぶようになった。そして、このおばあちゃんのおかげで、清緑園の開店時に周囲の方々との挨拶の仕方や付き合い方まで、いろいろと教えてもらった。

    時が経ち、おばあちゃんの足腰が悪くなり、車椅子で息子さんが付き添って来店するようになった。それでもおばあちゃんは変わらず、いつもニコニコしていて、清緑園の自慢の餃子など美味しそうに頬張っていた。そして、息子さんやスタッフと談笑し、とても幸せそうだった。お会計の際には、息子さんが代わりに支払いをするようになり、決まって「お釣りはいいよ」と、おばあちゃんと同じように言った。

   コロナ後、おばあちゃんが久しぶりにご来店した。しかし、体の状態が以前よりも悪くなっていた。そして、数ヶ月後のある日、おばあちゃんの息子さんが、自分の息子を連れて食事に訪れた。「おばあちゃんは、どうして来ていないの?」と尋ねたスタッフに、おばあちゃんの息子さんは「母は亡くなりなりました」と告げた。その言葉を聞いたホールスタッフは、思わず涙をこぼした。

   今日、目の前にいるのは、その息子さんのさらに次の世代——おばあちゃんの孫だった。立派な青年になり、隣には可愛らしい彼女もいる。そんな彼の口から、おばあちゃんと同じ言葉がこぼれた。

   言葉にできない感情が胸に込み上げる。人の温かさや、思いやりの心は、こうして静かに受け継がれていくのだと感じた。
きっと、おばあちゃんも、天国で微笑んでいる。

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