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言葉がいらない関係

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2025年の年末のある日、年配のお客様が二人いらっしゃった。
見たところ、六十代後半から七十代くらい。男女お二人だったが、私の第六感では「お二人はご夫婦ではない」と感じた。

席に着くと、女性がメニューをしばらく眺めてから、男性のほうを見て言った。
「あなた、エビが好きだったでしょう。エビ料理を頼みましょう。」
男性は少し照れくさそうに、でもとても嬉しそうにうなずいた。

それから女性は次々と注文をする。
エビ餃子、エビと玉子のふんわり炒め、海老のチリソース、アスパラとエビの炒め。
どれもエビの料理だった。
最後に、男性のために生ジョッキも一杯頼んだ。

料理が一品運ばれてきたころ、男性が言った。
「あなたも何か飲んだら?」
「じゃあ、白ワインをお願いします。」
女性はそう言って、私のほうを見た。その瞬間、彼女の目と合った。
その目は、長い人生を経た人特有の深みではなく、好きな人の前にいると、自然と表れてしまう、少し嬉しそうな目だった。

厨房の動きは早く、注文してからまもなく二品がテーブルに並んだ。
昼の忙しい時間帯で、本来であれば、回転率を上げなければならない。
その時の私は、店の都合でこの二人の時間を壊したくなくて、残りの料理は少し待ってもらうことにした。

遠くから見ると、二人は時折一緒に窓の外を眺め、時折グラスを口に運び、ほとんどしゃべらず、ただ同じ時間を分け合っているようだった。

途中、男性が私を呼び止め、紹興酒を一合追加で注文し、そして「美味しいね」と私に言った。
二人は同時に私を見て笑った。心から楽しい、そんな笑顔だった。
男性が続けた。
「私たち、昔この近くの小学校に通っていてね……」
その先は、もう耳に入らなかった。
その一言だけで、どんな物語か、想像ができた。

その後、店は忙しくなり、二人がいつ帰られたのかは気づかなかった。
一人になった時に、お二人のシーンを思い出して思った。
向かい合って座っているだけで、何も話さなくても、心が落ち着く。
そんな関係、確かに存在するのだ。

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