中国では古くから、人生において三つの「幸事(日本語:幸いなこと」があると言い伝えています。三つの「幸事」とは、虚惊一場(日本語:杞憂に終わる)、失而复得(日本語:失くした物が返ってくる)、久别重逢(日本語:久々に再会する)ことを言います。
長い人生の中では誰しも、いずれか、もしくはいずれも経験したことがあると思います。つい先日、私は「失而复得」を経験しました。
唯有失而复得,才能弥足珍贵
「失った後に取り戻したものほど、大切なものはない」
その日、仕事を終えて家に帰ろうとしたら、自転車がないことに気づきました。ちょうどその日の朝、駐輪場で会ったマンションの管理員から「最近、スポーツタイプの自転車が狙われているよ!」と言われたばかりでした。そうか、盗まれたかと思いました。
「まあ、仕方ない」と諦め、歩いて帰宅しました。ハンス・ジマーの音楽を聴きながら、ゆっくり歩き、少し冷たい風ですが、実に気持ちが良かったものです。
翌日、スタッフたちに自転車を無くしたことを伝えました。「もしかしてどこかに自転車で出かけ、そのままそこに止めて歩いて帰ってきたじゃない?」と女性スタッフに言われました。確かに、以前何度か自転車で出かけたものの、歩いて帰ってきたことがあります。前日の行動を思い出しながら、探しに出かけましたが、思い付いたところにはありませんでした。
縁日の日、いつも通り商店街で散歩していたら、ローソンの前に停まっている一台の自転車に目がとまりました。「自分の自転車だ!」と思わず心の中で叫びました。いつ、なぜローソンに行ったのか、全く記憶はないのですが、自転車が戻ってきてくれたこの瞬間に「失而复得」の嬉しさがこみ上げ、この日は一日中気分上々でした。
人生の三大「幸事」とは言え、いつも期待感、失望感、無力感が伴います。今回は喜びを感じた時初めて「幸事」と言えると思いました。父が癌になったと母から聞いた時に、これはきっと「虚惊一場」として、自分を騙そうとしました。別れたまま、同じ関東圏にいるのになかなか会えない人、いつかきっと「久别重逢」できると信じています。人生をいろどる三大「幸事」が、どなたも遭遇することを念じています。
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